第600回 ほどく

 平成16年 7月22日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございます。

毎日暑い日が続きますが、お参りの時にいつも出迎えてくれる犬が、
夏バテなのか姿をみせません。


三から四メートルはある長い紐でつながれている白い犬で、足元に
近づいてきて尻尾を振って、いつも出迎えてくれていました。


暗い物置の中をのぞいてみると、犬小屋の柱と、近くに置かれた
ホウキに紐を複雑に巻き付けて、動けなくなっていました。


運動のためにクルクル回ったのか、あるいは巻き付いたのを
はずそうとして動き回り、尚一層複雑にからみあったのか、柱に
直接くくり付けられたように、神妙な姿で、首を斜めにし、こちらを
みつめています。


吠えてくれれば誰かきづくだろうに、黙ってうらめしそうに見ています。
悪いことをしてお仕置きを受けている犬のように、かしこまって
座っていました。


巻きついた紐をはずしてやろうとしましたが、余りにも複雑に巻き付いて、
いったん首輪から紐をはずして、やっとのことで解くことができました。


離れた所からみると、どう絡み付いているのかは、見えますが、犬からは
どうなっているのか、さっぱり分からず、動けば動くほど、紐は短くなって、
まったく身動きが取れなくなってしまったのだろうと思います。


「大変だったね。」と声をかけながら思いました。

私たちも、きっと同じような失敗をしているのではないかと。
無我夢中で動き回るうちに、段々と身動きがとれなくなり、どうしたら
いいのだろうかと一人悩み苦しんでいるのではないか。


助けを求めればいいのに、それも出来ずじっと座り込んで。
ちょっと離れたところから見れば、そのもつれがどうなっているのか
分かるのに、自分の目、自分の力だけを頼りにして、困りはてて
いるのではないかと。


阿弥陀さまは、南無阿弥陀仏を私たちに与えて、どうすれば私を
縛り付けている苦しみから抜け出せるのか、教えていただいている
のだと思います。


自分の目では見えなくても、南無阿弥陀仏を口にする生活を始めて
みると、右に回って、飛び越えて、左にまわって、くぐってと、巻き付いた
紐をほどく方法を教えていただいているのだと、味わえます。


仏さまだけではなく、同じ南無阿弥陀仏の人が、近づいてきて、
捕らわれた心が少しずつほどけていくのだと思います。


南無阿弥陀仏は、もつれた私の心をほどいて、のびのびとした人生を
与えてくださる言葉、そして南無阿弥陀仏の仲間、御同行が近くに
いてくださるのです。


ひとりぽっちではなく、阿弥陀さまも、南無阿弥陀仏を口にする仲間も
すぐ近くにいて、いつも見守っていてくださるのです。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。  
次回は、7月29日に新しい内容に変わります。