第531回 親の願いが

 平成15年3月27日〜

妙念寺電話サービス、お電話ありがとうございます。
巡番報恩講の法座で、こういうお話を聞かせて
いただきました。


悲しいことに人間は弱いものを見ると、いじめたく
なる人がいます。


子どもの時に病気で足が不自由になった
お嬢さんがいました。


高校に入って、水泳大会が開かれる時のことです。
クラス対抗リレーが大会の呼び物で、男子はすぐに
代表の選手が決まりましたが、女子はなかなか
決まりません。


その時、足が不自由で、ほとんど泳げないその
お嬢さんの名前を、いじめっ子が言いました。
自分で断ればいいのに、誰かが助けてくれるだろうと
思って黙っていると、大きな拍手が起こって、
平泳ぎの選手に選ばれてしまいました。         


家に帰って、学校を休みたい、大会に出たくない、
風邪の診断書を学校に出してと頼むと、いつも
優しいお母さんが、どうしても賛成してくれません。


「ちゃんと自分で断れば良いのに、いまさらウソの
診断書で逃げるなんて、駄目です。
選手に選ばれたのなら泳ぎなさい」というのです。


お嬢さんは、怒って部屋に閉じこもり、泣きました。
一番の理解者と思った母親までが、自分の苦しみを
分かってくれないと、悔しくて悔しくてたまりませんでした。


やがて、汗と涙を洗いに、部屋を出たとき、お仏壇に
向かっている母親の姿をみました。


「可哀相です。でも、一生ウソをつき続け、甘えて
生きていくことは出来ません。どうか自分で苦しみを
乗り超えていく力を与えてください」と母親は手を
合わせ泣いていました。


これを聞いたお嬢さんは、母親が自分のためを
思って、つらく当たったのが分かりました。

 お嬢さんは水泳大会に参加しました。
でも、わずか8メートルぐらいしか泳げないのです。
他の選手がどんどん進んでいくのに、伸びない足を
必死に動かして泳ぐので、なかなか前に進みません。


やがて、力尽きてズブズブと水の中に沈んでいきます。
その時、定年まじかな校長先生が服を着たまま
飛び込んで、彼女を押し上げ、「もう少し、もう少しと」と
励ましながら一緒になって泳いでくれたといいます。


また沈んでしまいそうになると、持ち上げて、長い時間
かかって、ついに25メートル泳ぎきりました。


プールサイドからは大きな拍手がわきました。

 このお嬢さんが、学校を休まず大会に参加しょうと
決心したのは、母親の思いが伝わったからです。

自分のことを一番心配してくれている人がいることを
知って、勇気が与えられたのです。


南无阿弥陀仏のお念仏は、この私のことを
一番心配してくれている仏さまの願いです。


その願いが聞こえたとき、どんな苦しみにも
立ち向かっていく勇気と力が与えられるのです。
どんな時、どんな所でも、力の限り努力している
人の姿が尊く、美しくそれを後押ししてくれる人が
現れることも多いものです。


大きな悩み苦しみがあっても、逃げずに
立ち向かっていることをちゃんと知って、
心配せずにいい、力を出し切れとの親の
励ましの声、阿弥陀さまの呼び声を聞きながら、
南无阿弥陀仏を口に、今この時を、精一杯
生き抜いていきたいものです。


妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、4月3日に新しい内容に変わります。