第357回 自利即利他の教え

              平成11年11月24日〜

妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
法要の席で、お浄土のお話をしておりましたら、
「将来の幸せではなく、今が幸せでないと意味が
ないのではないですか」との質問を受けました。
浄土真宗の教えを、今この時とは関係ない、
将来のことと受け取っておられる方が
案外多いものです。
それに、救われる救われるといいますが、自分だけ
幸せになるというのでは、すべての人が救われるという、
大乗仏教ではないのではないかと、
おっしゃる方がありました。
 しかし、正信偈の中には、私がすくわれることは、
ちゃんと他の人を救う働きがあると書かれています。
赤いお勤めの本の20ページに
帰入功徳大宝海 必獲入大会衆数
得至蓮華蔵世界 即証真如法性身
遊煩悩林現神通  入生死薗示応化
のところです。
現代語訳(早島鏡正師)には、
『浄土論』に次のように説かれている。
「悟りをひらくためのあらゆる功徳に満ちた名号の
大宝海に帰入すれば、必ずこの世において
浄土の菩薩たちの仲間に入るであろう。

そして命終わって大蓮華には蔵(おさ)められた
世界とも呼ばれる安楽浄土に往生すれば、
たちどころに悟りをひらいて仏たらしめられる」と。
また「仏となれば、人々を救うべくこの世に還り、
煩悩の林に遊化して神通力をあらわし、輪廻の
薗に入って、教化の働きをなす」と。あります。
親鸞聖人は、阿弥陀如来の働きにより、信心を
得た人がこの世で得る利益である、仏になるに
間違いない位、正定聚不退転の位に住するのであり、
やがて命終わって浄土に生まれ仏と成ると、
浄土にいつまでも居るのではなくて、
再びこの迷いの世界に戻って、有縁の衆生を
救う利他の働きに従事するのであると教えて
いただいています。
私が仏に成らせていただく自利がそのままが、
多くの人々を救う利他の働きがある、自利即利他の
大乗仏教の教え、それが、お念仏の教えであると。
 浄土に往生すると、人のため世のためになすことが
無上の楽しみになる。
これが仏さまの境涯ですが、迷いの世界にいる間も、
迷いの世界にいながら、浄土の仏さまの働きを
恋い慕うことで、自分中心な私が、自分のことだけではなく、
周りの人びとのことにも思いをめぐらす、人間らしい
力つよい毎日が与えられるのでしょう。
南無阿弥陀仏を口にし耳に聞く生活で、空しくない
充実した人生がよみがえるのです。
南無阿弥陀仏の教えは、将来だけの教えではなく、
今この世を、力強くいきる力を与えてくださる教えで
あるのです。
妙念寺電話サービスお電話ありがとうございました。
次回は、12月2日新しい内容に変わります。
 

              
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