「窯跡出土の初期色絵素地大皿について」
−山辺田窯跡・丸尾窯跡を中心として−
村 上 伸 之 その８
■ STARTING
POINT ■ 本日は、丸尾窯跡出土色絵素地の分類を示した部分を掲載する。 （註）原文の遺物分類の表記には機種遺存文字を含む。そこで、ここでは各窯の表記に色分けを用い、以下のように示した。
本文中では、染付入り素地を体部の形状から《Ａ》〜《Ｃ》・《他》の４種類、計11タイプに細分し、底部の形状から《ア》・《イ》・《エ》の３種類、計４タイプに細分した。また白磁素地は、体部の形状から《Ａ》〜《Ｅ》・《他》の６種類、計21タイプに細分し、底部の形状から《ア》・《イ》・《エ》の３種類、計５タイプに細分した。
●３号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●４号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●２号窯 染付入り素地 「□−□類」 白磁素地「□−□類」
●７号窯 染付入り素地 「□−《□》類」 白磁素地「□−〈□〉類」
●１号窯 染付入り素地 「□−〔□〕類」 白磁素地「□−〔□〕類」
●丸尾窯 染付入り素地 「□−（□）類」 白磁素地「□−（□）類」
３． 出土素地の分類 (六）丸尾窯 本窯から出土している色絵素地の可能性がある製品は約270点ほどあり、その中には染付の入るものが50数点ある。ただし出土製品は小片が多いため、中には染付製品の混じっている可能性はある。素地はほぼ皿類に限られ全体の形状が分かるものは少ないが、部分的にはかなり多様な種類がある。 ＝染付の入るもの＝ （１）体部からの分類 《Ａ》口縁部の直行するもの Fig.６へ Ａ−（１）類（Fig.６−１） Ａ−（２）類（Fig.６−２） Ａ−（３）類（Fig.６−３） 《Ｂ》口縁部の外反するもの Fig.６へ Ｂ−（１）類（Fig.６−４） 《Ｃ》折り縁にするもの Fig.６へ Ｃ−（１）類（Fig.６−５） 縁を急角度で折った深めの皿で、内外面の縁の内側に圏線を１本づつ入れたもの。縁の幅は1.2cm程度である。 Ｃ−（２）類（Fig.６−６） Ｃ−（３）類（Fig.６−７） Ｃ−（４）類（Fig.６−８） Ｃ−（５）類（Fig.６−９） 《他》その他 PL.５へ 他−（１）類（PL.５−２） 他−（２）類（PL.５−３） （２）底部からの分類 《ア》高台の断面をU字形にするもの PL.９へ ア−（１）類（PL.９−１） ア−（２）類（PL.９−２） 《イ》高台の断面を四角くするもの PL.９へ イ−（１）類（PL.９−３） 《エ》高台の高いもの PL.９へ エ−（１）類（PL.９−４） ＝染付の入らないもの＝ （１）体部からの分類 《Ａ》口縁部の直行するもの Fig.６へ Ａ−（１）類（Fig.６−10） Ａ−（２）類（Fig.６−14） Ａ−（３）類（Fig.６−11） Ａ−（４）類（Fig.６−13） Ａ−（５）類（Fig.６−12） 《Ｂ》口縁部の外反するもの Fig.６へ Ｂ−（１）類（Fig.６−16） Ｂ−（２）類（Fig.６−17） Ｂ−（３）類（Fig.６−18） Ｂ−（４）類（Fig.６−15） Ｂ−（５）類（Fig.６−19） Ｂ−（６）類（Fig.６−20） 《Ｃ》折り縁にするもの Fig.６へ Ｃ−（１）類（Fig.６−26） Ｃ−（２）類（Fig.６−21） Ｃ−（３）類（Fig.６−22） Ｃ−（４）類（Fig.６−23） Ｃ−（５）類（Fig.６−24） Ｃ−（６）類（Fig.６−25） 《Ｄ》体部を２段以上にするもの Fig.６へ Ｄ−（１）類（Fig.６−27・28） Ｄ−（２）類（Fig.６−29） 《Ｅ》ドラ鉢形 Fig.６へ Ｅ−（１）類（Fig.６−30） 《他》その他 PL.５へ 他−（１）類（PL.５−５） （２）底部からの分類 《ア》高台の断面をU字形にするもの PL.９へ ア−（１）類（PL.９−５） 《イ》高台の断面を四角くするもの PL.９へ イ−（１）類（PL.９−６） イ−（２）類（PL.９−７） イ−（３）類（PL.９−８） 《エ》高台の高いもの PL.９へ エ−（１）類（PL.９−９）
深めの大皿で、口緑部の内外面に二重圏線を入れたもの。
深めの大皿で、口縁の端部を平坦に近くしたもの。外面は口縁部と腰部に１本ずつ圏線を入れ、内底周囲に段を付している。
口径21cm前後の浅い中皿で、外面の腰部に１本、高台脇に２本の圏線を入れたもの。高台内にも《１−１》の圏線が配され、内底周囲に浅い段が付されている。
確実に色絵素地と分かるものはないが、可能性があるものとして内面口縁部に１本圏線を入れ、外面胴部に文様を付したものがある。
深めの大皿で、縁の端部を上に曲げているもの。外面の縁と胴部の境に圏線を１本入れている。縁の幅は1.3cmほどである。
深めの大皿で、縁の端部を上に折っているもの。内面の縁端部の折った部分と外面胴上部に圏線を１本入れている。縁の幅は1.7cmほどである。
中皿で、外面胴上部に１本、内底周囲に２本の圏線を入れたもの。高台内に圏線は入れていない。縁の幅は1.7cmほどである。
口径21cmほどの浅い中皿で、内外面の縁を折った部分に１本の圏線を入れ、外面胴部に松葉文を配したもの。緑の幅は８mmほどである。
高台内に《２−０》の圏線を入れたもの。
高台内に「太明」銘を配したもの。
内側面を直立、外側面をやや内傾させた器厚の薄い高台で、畳付を丸く削るもの。Ａ−（３）類を始め、中・小皿類に多い。３号窯のア−１類に多少似ている。
高台の内側面を直立かわずかに内傾、外側面をやや内傾させたもので、畳付を丸く削り外角は傾斜に沿って広めに釉を剥いでいるもの。大皿に多い高台である。
高台の内側面を直立かわずかに内傾、外側面をやや内傾させたもので、畳付を平らに削るもの。２号窯のイ−１類に多少近い。
高さ4.7cmほどの高台で、付け根の部分に圏線を１本入れている。畳付は平らにして、両角もわずかに斜めに削っている。３号窯のエ−３類に類似している。
一般的な大型の丸皿。内底周囲に段を付したものはない。
口径34cm前後と推定され、口銹を施した大皿。口縁端部は平らに削っている。内底周囲に段を付したものはない。
口縁部を切って花形にしたもの。外面胴部を所々斜め方向に指で押さえ捻花状にしている。内底周囲に浅い段を付している。
口径16cmほどと推定される、浅めの小皿。
浅めの小皿で、口緑の端部を上に折って花形に切ったもの。
口径36cm前後と推定され、口縁の端部近くを外反させる深めの皿。
口径38cm前後と推定され、口縁部を大きく外反させる深めの皿。Ｂ−（１）類よりも器壁は薄く作られている。
口径32cm前後と推定される、口銹を施した大皿。口縁の端部は平らに削られ、内底周囲に浅い段を付している。
口径34cm前後と推定され、胴部から一度外反させ、口縁部を内側に曲げて口銹を施した深皿。内底周囲に浅い段が付されている。
口径20cmほどと推定され、口縁の端近くを外側に曲げたもの。内底周囲に浅い段が付されている。
浅い中皿で、口縁部を折り縁に近い状態に曲げたもの。
口径39cm前後と推定され、縁幅２cmほどの折り縁にした大皿。内底周囲に浅い段が付されている。
Ｃ−（１）類に類似したもので、口銹を施しているもの。縁幅は1.8cmほどである。
縁の内端を凸状にした大皿。縁幅は1.8cmほどである。
Ｃ−（３）類と似た縁を作り、縁の幅が狭いもの。縁幅は1.1cmほどで、内底周囲に浅い段が付されている。
口径22cmほどの浅い中皿で、折り縁にしたもの。縁幅は1・2cmほどである。
口縁部を曲面状に折り曲げたもの。口縁部の破片のみで、本当に皿として良いか不明である。
口径23cm前後のものと30cmを超えると推定されるものがあり、胴部で外側に折って、口縁部を内抱え状にしたもの。
胴部で外内の順に折って、外面口縁部を凸状にしたもの。内底周囲に浅い段が付されている。
口縁の端部をわずかに外側に曲げたものがある。
底部の破片で、外面腰部を「く」字状にしたもの。内底周囲には段が付されている。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付を丸く削っているもの。畳付に銹釉を塗ったものもある。大皿に多い。４号窯のア−２類や２号窯のア−１類に類似している。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付を平らに削っているもの。大皿には見られない。
高台の内側面を直立、外側面をやや内傾させ、畳付を平らにして両角を斜めに削っているもの。４号窯のイ−２類にやや近い。
高台の内外側面を内傾させ、畳付を平らにして両角を斜めに削っているもの。大皿に多い。
高さ2.3cmほどの高台で、畳付を平らにして両角をわずかに斜めに削っているもの。４号窯のエ−１類に類似している。
■ COMMENT ■ ● 丸尾窯は、山辺田窯の位置する黒牟田地区の隣、丸尾地区に位置する。色絵素地も比較的多く生産されたことが知られているが、現在では道路等の敷設などによって、窯跡はほぼ壊滅状態である。山辺田窯と異なりおそらく窯体は１基で、1650年代前後に短期間設けられていた窯場と推定される。 ● 出土している色絵素地には、染付の入るものと白磁の両方がある。まれに高台内に二重の可能性のある染付圏線を配したものもあるが、原則的には一重以下である。また、山辺田窯跡のように外面胴部に染付文様を配したものは、可能性のあるものは指摘できるものの明確な例はこれまでのところ認められない。地肌は独特な乳白色を呈するものが多く、山辺田窯跡と比べ、概して鉄分の発色が少ないのも一つの特徴である。
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