幸平遺跡( 続 報 )

 所 在 地:佐賀県西松浦郡有田町1521・1522番地
 調査予定:有田町教育委員会


 



 

● 困ったことに…。



 今日、『佐賀新聞』の一面トップに、幸平遺跡の記事が掲載された。カラー写真(敷地・出土製品)付き、地図付きで文化財関係の記事にしては大きな扱いである。もちろん、別に周知化された遺跡の記事が乗ること自体、何も困らない。むしろ、まだ一般社会では蚊帳の外というイメージの強い埋蔵文化財の周知化という意味では、歓迎すべきことであろう。
 でも、今回は正直なところ困った。それは、2例目の赤絵屋発見、みたいな断定的な見出しがでかでかと紙面上で踊っているからだ。
 “可能性は高いと言ったが、赤絵屋と断定できるとは言ってないぞ!”
 “それを探るために、これから調査する予定なんじゃないか!”
 見出しにインパクトが不可欠なのは当然。気持ちは分かる。だが、まだ調査前なんだから、せめて後ろに“”か“”を付けるくらいのお目こぼしは欲しかった。“言葉が独り歩きしなければいいけど”と思うと、ちょっと気が重くなってきた。
 肝心の発掘調査の方は、現在事務的な手続きを踏んでいる段階で、まだ詳しいことは決まっていない。しかし、今回の新聞報道がどう影響するのか。来週からの展開は読めない。


 とりあえず本日は、ついでといっては何だが、表土除去の時に出土したこんな地味なもんでも紹介しておくことにする。
 前にも記したことがあるが、幸平遺跡で出土している製品は、通常の組成と比べると白磁の割合が高い。(1)と(2)の左側の碗は、その中に含まれる染付文様のない白磁である。ただし、少し特徴があり、両方ともに内面に焼成前の赤絵具が付着している。実は採集時にはもっとべったり付着していたのだが、当然ながら水洗いしたら流れてしまった。さらに底部の残る(1)の場合、よく見ると内底部は擦り減った状態になっている。こうした内部に絵具を入れた碗や擦られた碗は、唯一の赤絵屋が発見されている有田郵便局の敷地でも多く出土している。こうした器は上絵付けの際に絵具入れとして用いられるもので、乳房で擦って使うためこうした擦痕が残る。こうした絵具入れは、特に専用のものはなく碗や猪口などが適宜転用される。
 (2)の右側の碗は、白磁素地に上絵を施した色絵碗である。ただし、特に何の文様というわけでもない。この手の文様の製品はやはり郵便局の敷地でパラパラと出土しており、おそらく絵具をテストするための、テストピース的なものではなかったかと推定される。したがって、通常文様の周囲には黒絵具などで輪郭線を描くことが一般的であるが、この碗の場合、絵具をベタ塗りしているだけである。

 


(1)白磁碗            (内面)                      (外面) 


(2)白磁碗と色絵碗       (内面)                      (外面) 

 

                 

                  


 



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