「文化ホールの仕事」

内容の概要
 
 新しく文化ホールを建設するときやホールの仕事を始める
時、本来なら直営・委託を問わず、その運営を所轄する団体の
職員が一定期間中に、参考となる先進館や専門家の指導、助言
を受けて会館の運営や舞台運営の心得や、その技術について学
ぶのが一般的ですが、このようなことがなかなか出来にくいの
が現状ではないでしょうか。
 現在の状況は、直営方式は新規の会館では殆ど見当たらず、
何らかの形での委託方式が一般的になっています。
 しかし、現在の舞台運営の技術要員は、舞台を取り巻く業界
が、職員を養成するための経済的基盤が脆弱であったり、養成
しなかったことや、文化ホールの運営の所轄団体そのものが、
委託料金などの算定を低く予算化するなどの複合的な理由で、
技術員の供給はすでに限界に達しています。
 そのため、新しい文化ホールを建設しても、一定レベル以上
の技術の確保はますます難しいのが現状です。
 そこで本書は、文化ホールそのものが、独自で舞台の運営を
行わなければならない場合や、新規の職員のために、舞台全般
に関ることがらをわかりやすく説明し、実務の初歩用と研修用
に作成したものです。
 舞台の仕事そのものが、創造芸術の要素が大変強いために、
舞台の仕事に、一定の規格を定めることは難しいのですが、本
書ではこの仕事を始めるにあたっての導入書としての事項を述
べてみました。
 ホール全般の運用については、拙著「文化施設の運営と管
理」を加筆しています。
 また、本書を読まれた後に、専門的に深く勉強したいと思わ
れるときは、各々の専門書を読むことをお薦めします。
 指導してくれる人たちが近くにいる場合は別として、このよ
うな参考書そのものが必要な人たちに、何らかの形で技術の導
入書とすることは、私たち舞台の周辺で仕事をする者の責務で
はないだろうかと思い本書を上梓するものです。
                       稲田 智治

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